哺乳研究

赤ちゃんにとって、哺乳することは生きていく上で大切な活動です。ピジョンは「赤ちゃんが哺乳すること」をサポートし続けることを会社全体の目標としています。よって「赤ちゃんが哺乳すること」を解明する哺乳研究は、単に哺乳びんや人工乳首の研究開発だけでなく、ピジョンの育児に対する取り組み姿勢を表すものであると考えています。

赤ちゃんの哺乳運動は、大人が飲み物を飲む時の、吸って飲む運動とは異なります。赤ちゃんは舌を波のようにうねらせて、乳首をしごくようにして母乳やミルクを吸引しています。長年にわたる哺乳研究により、哺乳運動は3つの原則から成り立っていることがわかっており、我々はそれを「哺乳の三原則」と呼んでいます。
哺乳の三原則は、吸着、吸啜(きゅうてつ)、嚥下からなっています。

1.吸着(きゅうちゃく)「パクッとくわえる」

赤ちゃんにとって唇は吸盤の役割を果たします。口を開いて乳首をくわえ、上下の唇を外側に開き、ママの乳首そして乳輪部分まで、しっかり密着させます。

2.吸啜(きゅうてつ)「舌の動きで母乳を引き出す」

舌を波のようにうねらせて、乳首をしごくようにして母乳やミルクを吸引します。この波のような動きを、蠕動様(ぜんどうよう)運動と呼びます。

3.嚥下(えんげ)「ゴックンと飲み込む」

大人は「ゴックン」と飲み物を飲む時に、一度呼吸を止めて、呼吸と飲む動作を使い分けていますが、赤ちゃんは呼吸運動と舌運動が同時進行で起こります。同時進行の中で、赤ちゃん特有の「ゴックン」をしています。

ピジョンにおける哺乳研究は、三原則ひとつ一つを詳しく解明していくと同時に、赤ちゃんが「まるでママの乳首から哺乳しているような」人工乳首の開発に役立てることを目指しています。

哺乳についての研究レポート

嚥下(えんげ)の研究

2005年~2009年にかけて、哺乳中の舌運動と嚥下の協調運動についての解明に挑戦しました。 従来、哺乳中に呼吸が連続するのかどうか、それとも哺乳時には呼吸が停止するのか、どちらなのかについての議論があり、詳しいメカニズムが不明なところがありましたが、5年間にわたる哺乳中の呼吸分析により、哺乳運動と呼吸運動は基本的には連続していますが、嚥下の瞬間呼吸が一時的に抑制されることが判明しました。同時にこの研究の中で、赤ちゃんの口腔内に入ってくる母乳の量が多いと、呼吸抑制が顕著となることが確認され、新生児や低出生体重に対しては、呼吸抑制が顕著に発生しないように多量なミルクを口腔内に送り込まないような人工乳首が適切である、という結論にいたりました。
(石丸・斉藤、2005 / 長島・石丸・斉藤、2006 / 岡野・斉藤、2007 / 岡野・斉藤、2008 / 斉藤・岡野、2009)

直母乳首とボトル乳首の併用の研究

乳頭混乱*が唱えられる中で、ママの乳首からの哺乳と人工乳首からの哺乳の併用率の調査を2007年~2010年にかけて実施しました。この調査では、よりやわらかい人工乳首を使用した場合の併用率の高さが確認されました。
(石丸・斉藤、2007 / 石丸・斉藤、2009 / 石丸・斉藤、2010)

*乳頭混乱:人工乳首からの哺乳に慣れてしまった赤ちゃんがママの乳首からの哺乳ができなくなり、直母率が低下してしまう現象(同時に、ママの乳首からの哺乳に慣れてしまった赤ちゃんが、人工乳首からの哺乳ができなくなる場合も広義の上で、乳頭混乱に含まれる。

直母乳首哺乳と人工乳首哺乳の舌運動の比較

2010年、直母哺乳(直接ママの乳首から哺乳をする)の時の舌運動を、人工乳首哺乳(人工乳首から、さく乳した母乳を哺乳をする)の時の舌運動を比較検討した結果、直母哺乳の時は乳首を先端までしっかりつぶして哺乳をしていましたが、人工乳首からの哺乳では、乳首先端までしっかりつぶすことができず、乳首の根元部分をつぶして哺乳する傾向が強いことが分かりました。その中で、乳首先端までしっかりつぶすことが可能な母乳実感乳首で哺乳をすると、直母哺乳の時と同様な舌運動が確認され、母乳実感乳首での哺乳運動は、直母乳首での哺乳運動との類似性が強いことが確認できました。(斉藤・岡野、2010)

哺乳研究について

赤ちゃんの哺乳運動は生まれたその日から開始します。基本的には直接ママの乳首から母乳を哺乳することが基本ですが、何らかの事情でママの乳首からの母乳の哺乳が無理である場合は、人工乳首の出番となります。したがって、生後すぐの赤ちゃんの観察から研究を開始する必要があるのですがこれを実現するには、ご家族だけでなく医療関係者のご理解とご協力が必須であり、我々ピジョンだけではどうにもなりません。
ご家族、医療関係者など、さまざまな方々のご協力をベースに、ようやく研究がスタートすることができるようになります。
この意味で、いわゆる研究所の実験室内だけで完結できるタイプの研究とは種類が異なると言えます。